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東京地方裁判所 平成7年(特わ)3061号 判決 1996年3月12日

本店所在地

東京都千代田区外神田三丁目二番二号

株式会社

ミクニ商会

(右代表者代表取締役 椚田嘉明)

本籍

東京都文京区本駒込一丁目一〇番地

住居

同都同区本駒込一丁目一七番二〇号

会社役員

椚田嘉明

昭和二〇年一月二七日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官沖原史康、弁護人江口英彦、同牧義行各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社ミクニ商会を罰金三〇〇〇万円に、被告人椚田嘉明を懲役一年二月にそれぞれ処する。

被告人椚田嘉明に対し、この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社ミクニ商会(以下「被告会社」という)は、東京都千代田区外神田三丁目二番二号に本店を置き、運動用品の販売などを目的とする資本金一〇〇〇万円(平成六年一一月二四日以前は資本金四八〇万円)の株式会社であり、被告人椚田嘉明(以下「被告人」という)は、被告会社の代表取締役として、同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、固定資産売却益の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿した上、平成四年九月一日から同五年八月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二億五二三一万一七〇〇円(別紙1の修正損益計算書参照)であり、課税土地譲渡利益金額が二億七九六四円であったにもかかわらず、同五年一〇月二七日、同都同区神田錦町三丁目三番地所在の所轄神田税務署において、同税務署長に対し、その所得金額及び課税土地譲渡利益金額が零で納付すべき法人税がない旨の虚偽の法人税確定申告書(平成七年押第一八二三号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一億二〇三七万四六〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れたものである。

(証拠の標目)

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書五通

一  蓮見渡、斉藤喜三、江口亘及び横島秀則の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の固定資産売却益調査書、退職金調査書、受取利息調査書、利息割引料調査書、損金の額に算入した道府県民税利子割調査書、欠損金の当期控除額調査書、課税土地譲渡利益金額調査書及び控除所得税額等調査書

一  神田税務署長作成の証明書

一  検察事務官作成の捜査報告書

一  登記官作成の登記簿抄本、登記簿謄本(二通)及び閉鎖登記簿(役員欄)謄本

一  押収してある法人税確定申告書一袋(平成七年押第一八二三号の1)

(法令の適用)

一  罰条

1  被告会社

判示事実につき、法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項(情状による)

2  被告人

判示所為につき、法人税法一五九条一項

二  刑種の選択

被告人につき、懲役刑

三  刑の執行猶予

被告人につき、平成七年法律第九一号による改正前の刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は、運動用品の販売等を目的とする被告会社が、一事業年度につき一億二〇〇〇万円余の法人税を免れた事案であるが、一事業年度としてはほ脱額が高額で、ほ脱率も一〇〇パーセントと悪質である上、その主たる手口は、固定資産売却益につき、売却先や仲介者と通謀して、実際の売却代金より少ない額を記載した売買契約書を作成するなど計画的なものであり、更に、脱税の動機をみても、被告人は、将来新事業を始めるために資金を確保しておきたかったなどと述べているが、そのような事情があるにせよ違法な手段による蓄財が許容される訳ではなく、格別斟酌するに値しないものであって、これらの諸点からすると被告人及び被告会社の刑事責任は重いというべきである。

しかしながら、他方、被告会社はその後修正申告の上本件に関する本税、延滞税等を完納していること、被告人は本件犯行を認めその非を深く反省していること、被告人には昭和四八年に道路交通法違反罪、業務上過失傷害罪により禁錮六月(三年間執行猶予)に処せられた前科一犯しかないことなど、被告人及び被告会社のために有利に酌むべき諸事情も認められる。

そこで、当裁判所は、以上のほか一切の情状を考慮し、主文のとおり量刑した次第である。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑 被告会社・罰金四〇〇〇万円、被告人・懲役一年二月)

(裁判官 平木正洋)

別紙1

修正損益計算書

<省略>

別紙2

ほ脱税額計算書

<省略>

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